第弐拾七話
『 月灯の下で 』

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街に近づくにつれ、悲惨な光景が目についた。
崩れた家やビル。倒壊した高架。燃える車、街。
まるで爆撃を受けた街だった。アスカが猫に気付いたが、やはり人気は無い。
車を降りて、危険の少ないところも歩いてみたが、人の名残は散乱した衣服だけだった。
アスカが「帰ろう」と言った。その表情は悲しそうだった。

「シンジ!あそこ!」
帰る途中、大きな平屋のホームセンターがあり、車が無数にあった。
ほとんど被害は無い状態なので、中に入ってみた。
灯りは消え、衣服が人の形のまま床に散らばっていたが、物で溢れていた。
ラジオや電池。灯りや火種の物。アスカはセンスが悪いと嘆いていたが、下着や服を選んだ。火事場泥棒みたいで気が引けたが、仕方がない。
簡単な借用書を書いて、街を後にした。
「これで、ノーパンとはおさらばね」アスカの言葉にシンジは乾いた笑い。
「あぁ〜ら、残念そぉねぇシンちゃぁ〜ん」ミサトのマネをする。
「そっ、そんなんじゃないよ」
二人は家路についた。


「あそこってシャワーは無理かな?」とコンビニの近くまで来た時にアスカが言う。
戻ってから調べてみると、給湯器は健在だった。
「灯油の残りも調べなきゃな」なんであれ、限られた燃料に違いない。
「具合は大丈夫?」
「ちょっと手がまだダメだけどねー」と右手を示すアスカ。
「大丈夫かな…」
「あら〜ん?一緒に入りたいのかなぁ?」とアスカがからかう。
「まさかぁ…」棒読み。
「ふぅーん。まぁ、お先に失礼するわね」とシンジを脱衣所から押し出すアスカ。
アスカの後にシンジもシャワーを済ませると、アスカは他の服に着替えを済ませていた。
洗いざらしの髪はおろされていて、デニムのスカートに白いΤシャツ姿。シンジは不思議と懐かしくなった。
「中々似合うよアスカ」らしくない事を言うシンジ。
「それがさぁ〜、右手が背中に回らなくて、ブラできなかったのよ。だから、あんまり見ないでね」サラリと言うアスカ。
思わずガン見するシンジ。
「だから、見るなってぇ〜のぉ!」ぽっちりを隠してアセるアスカ。

…今日は誰も来なかった。
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