第弐拾七話
『 月灯の下で 』
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翌朝、アスカは、目を覚ますと隣に鏡台を見つける。
シンジはまだ寝息をたてている。
ゆっくり起きると、鏡の前で眼のガーゼを外してみる事にした。
ロンギヌスの槍の恐怖が甦る。眼が無くなった感じは無いが、変な違和感を感じていた。
恐る恐る外すと、確かに眼はあったが、瞳孔は開き、眼球が動かない。
『視神経がやられたかしらね。…治るのかしら?両腕パタパタ(ゼルエル)の時とは、相手のレベルも違うし…』試しながら考える。
「シンジぃ、朝よぉ」言いながら包帯を元に戻す。
「んー。…ァスカ…」と返事をしたが、まだ寝てるらしい。
「ほらぁ起きなさいよぉ」
隣に行って毛布を引き剥がすと、そこでアスカの動きが止まった。
再び毛布を元に戻す。
「んっ。おはよアスカ」
シンジが目を覚ます。おはよとアスカは答えて部屋を出る。
『こんな時でも、朝はあぁなるのねぇ…。なんかアレで普通のサイズ?』
顔が赤くなったのがわかったので、部屋を出たのだ。
しかし、いつの間にズボンを脱いだのだろうかと思いながらトイレを探す。
『あんなの入るのかしら?あたし…?』
少し生々しい想像をしたらしいアスカ。
二人が外に出てみると、日はすでにかなり高かった。
街の方を見ると、火事だろうか、立ち上る黒煙がいくつも見える。
昨夜は気が付かなかったが、人だけが突如消えたのだから大変な事になっているかもしれない。
「あっちの街なら誰かいるかな?」とアスカが言う。
「後でボクが見てくるよ。先に食事を…少しは食べれそう?」
「腐ってないものなら大丈夫よ、たぶん」アスカは少し不安げだった。
シンジは店の前に倒れていた自転車で街へ向かった。アスカに留守番をさせたかったが、嫌だと言うので結局二人乗りだ。
しばらくすると、ガードレールに衝突して大破した車があった。
人はいなかったが、炎上した形跡がある。
そんな車と何台かすれ違った後、道の真ん中に停まっている壊れてない車を発見した。鍵は付いているがエンジンは止まっている。当然、人は乗っていなかった。
「この車動かないかな?」
そう言いながらアスカがドアを開けようとすると開いた。鍵がかかっていない。普通、走っていた車なら鍵はかかっているし、エンジンも動いたままになっているはずとシンジは思ったが、とりあえずセルを回してみた。
「おっ!かかった!」アスカがエンジン音を聞いて言う。
「でも、車なんて運転したことない…」
「慣れればいぃーのよ!」
シンジの言葉をさえぎりながら後部座席に乗り込むアスカ。
「なんで後ろなの…?」さえない顔のシンジ。
「どっかにぶつかっても安全でしょ?」にこやかなアスカ。
「さぁー、ゆきなさいシンジ!」
自転車より遅いドライブが始まった。