エピローグ

モドル | ススム | タイトル一覧

  42  

「アスカは英会話教室の仕事順調なの?」
「もぉ〜それが、アホな生徒っばかりでナンパされまくりよぉ」
「ミサトさんはしばらく日本勤務なんでっか?偉くなると大変ですなぁ」
「国連軍ったって、今や災害復興支援任務ばっかりよぉー」
それぞれ勝手に雑談が始まり、大量に用意された酒がどんどん消えていく。
一時間もすると、みんな酔いが回ってグダグダになり始めた。
ミサト宅の気安さもあってか、ピッチが早すぎた。
「ミサトさぁ〜ん!ホントはミサトさんが好きだったんですぅ〜」
ケンスケが抱きつきにかかる。
「こらっ!相田くん!葛城さんはボクのモノだぁ!」
日向が阻止しにかかる。まわりはバカ笑いしてるだけ。
「よぉ〜しわかったわ!」突然アスカが声を上げた。
「これはあたしも、重大な事実を発表しなきゃならないわけね!」
皆意味がわからずアスカを見る。シンジだけが『まさか!』と顔をしかめる。
アスカの前にはビールの空き缶、日本酒にワイン。かなり酔いが回ってる。
「みなさん発表があるわ」その場にアスカがフラフラしながら立ち上がる。
「わたくしこと碇=アスカ=ラングレーは、一昨日に亭主の碇シンジにハラまされた事実が発覚いたしましたぁー!!」
「「何ぃー!」」「えぇー!」全員がドヨめく。
「しかも女の子です!」ワインのボトルを掴み上げ、高々と上げる。
「おめでとぉー!」ヒカリをかわ切りに、みなが祝福の声を上げる。
『やった…』と言わんばかりに、こめかみを押さえるシンジ。
「ありがとぉみんな!腑甲斐ない亭主だけど、立派な子を産んでみせますわ」
「ってか、あぁー!何種類ちゃんぽんしたんだよ?」シンジが慌てる。
「あらぁ〜ん。シンちゃんチェロで食べていけるよーにならないと大変よ」
そのまま、ご懐妊祝いに突入した。

「うぁあ〜、…まぁだ頭痛いわぁ」「おとつい、あんなに飲むからだよ…」
現在はまた小田原に改称された、以前の新横須賀に向かう車の中でアスカが呻く。妊娠した事を報告に行こうと言いだしたのはアスカだ。
車はすでに市内に入った。目指すのは思い出の場所だ。
昨年、シンジが大学に進学が決まってからすぐに籍を入れた二人だったが、妊娠がわかった時、アスカは「どうする?」と聞いた。生活に不安は無い。
大半は没収されたが、父ゲンドウの遺産もあるし、ネルフに在籍していた事への国連からの特別恩給も支給されていた。アスカが聞いたのは覚悟だ。
先に検査薬で可能性で話もしたが、病院での結果が出たときアスカは喜んだ。
もちろん不安もあった。アスカは家庭を良く知らない。シンジも同じだ。
だから、アスカは判断をシンジに委ねても良いと思ったのだ。
「ん〜、ベビーベッドを買うかレンタルにするかは悩むとこだよね」
トボけた答え方をしたシンジに、アスカは顔をほころばせた。
二人がしばらく過ごしたコンビニに着いた。家人はそれ以降不在のままだ。
「あぁ〜、サビれたまんまねぇ」車を降りたアスカが言う。
少し見て回るが、半年前に来た時と特に変わりはない。例の砂浜へ向かう。
砂浜は、既に海の名残を失っていた。海岸線は後退し、現在は数キロ先だ。
「変わっちゃったわねぇ」アスカが髪を押さえながら言う。
「そーだねぇ」なにげなしにシンジが答える。物憂げな瞳をしながら。
別離と再会の場所。母。綾波。カヲル。アスカ。心の壁の復活の地。
「シンジさぁ…。あれから泣かなくなったよね」アスカが小さく笑う。
「泣いたっけ…?」聞き返すシンジ。
『いつか裏切られる…』あの思いは、ここに捨てたのだろうか。
「あんな泣かれ方する女も、そんなにいないわよ」アスカが微笑んだ。
モドル | ススム | トップ