第弐拾七話

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歩きだしてしばらくすると、アスカが「休みながら行きましょ?少しくらい歩けると思うし」と言ったが、力なくグッタリしてるのがシンジには分かった。「うん」と答えたが、歩かせるつもりは無い。
最初は誇らしげな気分でアスカを背負ったが、今は強い義務感がある。
しかし、シンジは義務感以外にアスカの身体の感触に意識を集中せざるを得なかった。
いつもなら「へぇんな事考えないでよぉ」と言われるハズだったが、今日から何かがかわったのだろう。

シンジはアスカの体温を何だか、サラッとした暖かさに感じていた。
たぶんシンジより体温が低いのだろう。そして、やわらかさを感じてる。
プラグスーツの下は何も付けていない。
はずむ様な胸の膨らみも、吸い付くような太腿も、その感触を素肌に錯覚させる。
そんな邪念が、アスカを運ばなければならない意志と混ざり合ってシンジを寡黙にさせていた。
「ねぇシンジ」「んー?」
「ごめん。おしっこしたい」恥ずかしそうにアスカが耳元で言った。
シンジはアスカを林の中におぶったまま連れていった。

道から少し入った場所でアスカが「ココでいいわ」と言った。
アスカを下ろして道路にいるよと離れるシンジ。
動かしづらい右手も使ってモソモソとスーツを脱ぐ。
『こんな状況でも濡れるんだから、女もおかしなもんね…本能ってヤツ?』
と考えながらしゃがむ。
ただ、あまり自分の頭が働いていないような気もしていたら、気付いた。
「生理だ…そっか」


「わたしも少し歩いてみるわ」道に戻ったアスカは言った。
「えっ?大丈夫?遠慮する事ないよ」「足はケガしてないみたいだしだいじょーぶよ。」あえて生理とは言わないアスカ。「あとどれくらい?」「たぶん10分くらいかな」
「肩貸して」言いながらアスカは左腕をシンジの肩に回す。
歩きだす二人。
「シンジぃ。あたし女だわぁ」笑顔のアスカ。
「そりゃ…そーだけど。…どしたの?」
「なぁんでもない」楽しげなアスカだった。