第弐拾七話
『 月灯の下で 』

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1時間もたたなかっただろうか。程なく、シンジがコンビニの袋に
ミネラルウォーターや食料を詰め込んで帰ってきた。
「アスカぁ〜水だよ!水!」
ぼんやりと砂浜に座っていたアスカに駆け寄り、ペットボトルを口を開けて差し出した。
アスカは一口飲んで、一度ムセたが、すぐ左手で500mlの水を飲み干した。
「んぐんぐんぐっ…ぷはぁ〜!くぅー生き返ったぁ〜」
「それじゃミサトさんのイッキだよ」シンジは笑った。
ふぅ〜と一息ついて、アスカは「誰もいなかった?」と聞いた。
その表情は予想を隠せなかった。
うんと頷いて、シンジはパンを袋から出し、差し出す。
アスカは首を振った。
「一人もいなかったよ。建物も半分崩れてて、ひどい状態だった」
シンジはミネラルウォーターを開けながら言うと、一口あおった。
「そぅ」とアスカは答え、ある事に気付いた。
「ねぇシンジ!その水冷えてない?」
また、一口水を含んでたシンジは「ホントだ!」とアスカを見た。
「きっとドコか発電所が生きてるのよ!」
「そぉか!電気が消えてたから気付かなかったんだ。きっとそうだよ!」
笑いあう二人。
なにかが変わる訳ではないけれど、二人は希望を見つけた気がした。

アスカのプラグスーツの時計によれば、今は夜の8持のハズだった。
「とりあえず、歩いて15分位だからさっきのコンビニに行こうよ。
ずーっとココにいるワケにもいかないし…」とシンジが言う。
確かに砂浜に居続けても辛そうだ。
「ここから向うに見える街への途中だから、ここから誰かが戻ってもきっとあの街に向かうと思うし…。反対側は山ばかりたからね」
「そうね」シンジがアスカに振り返ると、アスカの顔色が悪い。
「アスカ大丈夫?」心配するシンジに「大丈夫よ…疲れただけだから。
とりあえず行ってみましょぅ」
とアスカは笑ってみせる。シンジは肩を貸したが、やはりあんな事のあった後だ。ケガもしてるし、精神的な疲労も窺い知れない。
砂浜を抜けるとシンジは手を離し、「ほらっ」としゃがんで背を向けた。
「そんなに軽くないわよ」アスカが言う。
「大丈夫だよなんとかなるさ」
シンジが言うので、おんぶしてもらうアスカ。
「あっ!…今おしり触った」アスカが笑う。
「仕方ないだろっ」少し本気でアセるシンジ。
二人は歩きだした。
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