最終話
『 無と再生 』
38
「ぅぐんぐんぐんぐんぐぅ―ぅ。ぷぁっはぁー!くぅぅー。やっぱりこの一杯の為に人生があるのよねぇ―!」えびちゅビールの空き缶を握り潰しながらまさに感涙するミサト。
2階のリビングで、ソファーの向かいに座ったシンジは愛想笑いみたいな顔をした。シンジの隣に座ったアスカは両手を膝で握り、妙に行儀良く座ったまま目線を斜め下に落として、なにやらブツブツ囁いてる。
再会を果たした瞬間、ミサトは二人を指差し口をぱくぱくさせて、そのまま後ろに引っ繰り返って気絶したのである。
シンジとアスカが慌ててミサトをリビングに運ぼうとしたら、その途中で息を吹き返した。ひとしきり再開を喜びあった後、気付けにシンジが店からビールを持ってきたのだ。
「いやぁ〜、なんか良くわかんないんだけど、二人が無事で良かったわぁ」
ミサトがニマニマしながら言う。
「んで、シンちゃん。…ここドコ?…まさか天国じゃないわよね?」
「新横須賀です。それよりミサトさん、いつからあそこにいたんですか?」
微妙な表情のシンジ。
「これじゃギャグよ…ギャグキャラよ…ぶつぶつ」
アスカは顔の上半分に縦線が入った様な顔で何か言っている。
「それに、いつこっちに戻って来たんですか?」
「いやぁー、それが良くわかんないのよぉ〜。なぁんか砂浜にいたんだけど、良く覚えてないのよ。気が付いたらアスカがシンちゃんの上でねぇ〜」
アスカの肩がピクリと動く。
「てか、いつからそぉ〜ゆー関係だったわけ?」
口元を手で隠しながら、シンジにコソっそり聞くミサト。
「いやぁ〜」赤くなってテレるシンジ。
「いやぁ〜じゃないわよ…」ボソっと囁くアスカ。
「てゆぅ〜か!ミサトも状況ってヤツを考えて顔だしなさいよ!よりにもよって、よりにもよって…伏線も無しにあんなタイミングで!」アスカが半泣きで、ミサトにビシィっと指差す。
「ありゃぁ、ゴメンねぇ。…物足りなかったぁ?」3本目を開けるミサト。
「足りないわよっ!」「…いゃその。アスカ…」『そりゃ違うだろ』と言いたげなシンジ。
「シンジ君…。レイは?」
「だいたいねぇー、いつもミサトにはデリカシーってものが云々…」
立ち上がって腕組みしたまま、赤い顔をしてしゃべりだしたアスカを尻目にミサトが少し醒めた顔で聞いた。そこには何か覚悟があるのだろう。
「綾波は…、もう戻らないです。…きっと」
後悔を含んだように目を伏せ、シンジは寂しげに答える。
「…そう」それを見てミサトは答えた。知っていた気がするのだろう。
「ちょぉっとっ!ミサト!聞いてんのぉ!?」アスカが吠えた。
「あぁ〜、はいはい。聞いてるわよアスカ。まぁーアレよねぇー、シンちゃん誘惑しちゃダメよぉアスカ」気楽に言う。
「してないわよぉっ!」
「まったぁ〜、シンちゃんにアスカを押し倒す度胸なんてあるワケ無いじゃないのよぉ〜」左手をパタパタやって笑いながらビールをあおるミサト。
「いやぁ〜」右手で頭の後ろをぽりぽりやりながら照れるシンジ。
「ぅえっ!?押し倒しちゃったワケぇ!?」マジでびびるミサト。
「いえ。正確にはアスカが―」「解説入れてんじゃないわよぉ〜!!」
真顔で語り始めたシンジの喉に、アスカの右椀が飛ぶ。
ソファーの上で、じゃれる二人を見ながら、ミサトはビールをぐぃーっと飲み干し尋ねる。
「ところで、エヴァシリーズって、アスカがノシちゃったワケ?シンジ君間に合ったの?」
「そぉーよ!何であんなの量産したワケぇ?全機ブチのめしたと思ったらドバァーと飛んで来たロンギヌスの槍に串刺しにされて、内蔵電池は切れるわ、倒したエヴァシリーズに食われるわ、デロデロのぐちょぐぢょにされたのよ!」シンジの首を腕でキメたままアスカはイヤな顔をした。