最終話
『 無と再生 』

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その日から、シンジは生活環境の改善に乗り出した。
今までは、ただ消費するだけの流れだったが、どうやら変化をつけたいらしい。廃墟の中のサバイバルからの脱却をはかっている。もちろん出来る事など限られているのだが、まずは畑を作る準備から始めていた。
『こーゆぅトコは、人間臭い男の生産本能よねぇー』と、アスカは思う。
どうであれ、仕事を作ることは良いことだ。
「ジャガイモくらいなら、きっと収穫できるようになるさ」とシンジ。
「それはつまり、あたしにジャガイモ料理の百や二百は作れるよぉ〜にならないと、お嫁に行けないとのお気遣い?」どうせ料理ヘタですよと、言いたげなアスカ。
「ボクはカレーと、肉じゃがくらいで十分だけどね」とシンジ。
『んー?』アスカの思考がフル回転する。
『それはつまり、ボクのお嫁さんはカレーと肉じゃがが作れりゃOKって事ですかね?…あれっ?なんか意味ありげなよぉーな…』
帰宅中の車内で、ステアを握っていたアスカは赤くなる。
「あのさぁ、今の会話の流れって…」耳まで赤くなってるアスカ。
「とりあえず、ボクが教えてあげるから大丈夫だよ」
前をを見たまま爽やかなシンジ。
「えっ?あっ…そっ、そりゃぁ…どぉーも…はは」どぎまぎするアスカ。
一瞬、間をおいてアスカは悩みだす。
『何?今のはいったい何だったわけ?なにか深ぁい意味があったよーな、無かったよぉな…』
考え込むアスカをよそに、シンジは少しにこやかだった。

シンジが何かヤル気を持ち出してから、二人の生活のパターンに変化が出始めた。アスカは、あの砂浜で話した事がきっかけだろうと思っていた。
二人の距離が、身体の関係だけでは得られ無い距離に近づいた。
それは実感だった。
シンジは店の裏の原っぱを手作業で掘り返し、畑を作り始めた。人探しの日課も変わり、アスカも少し手伝ったりした。
畑作りを始めてから3日目の夕暮れ時、風呂あがりのシンジはコンビニの事務所から応接用の2人掛けソファーを引きずり出し、ガラス張りの外がよく見えるカウンターの前に持ってきて、しばらくぼんやりしていた。
「あっ!こんなトコに…って…」湯上がりのアスカが入ってくる。
「…アンタ、なんでバスタオル一枚でこんなトコにいるのよ?」
洗い髪のまま、ノースリーブシャツとミニスカート姿のアスカ。
「いや、のぼせちゃって」のどかに言うシンジ。
「ありえない光景なんですけど」呆れ顔のアスカ。
「ははっ。…なんか涼しくなってきたよね」とシンジ。
ここに来てから、不思議と夜になると過ごしやすくなっている気がする。
「まぁ〜そんな感じはするわねぇ。…ってえかぁー、そのカッコなんかエマニュエル夫人みたいよ」アスカが笑う。
「なにそれ?何夫人?」シンジは知らない。
「昔の映画であったのよ。エッチなマダムの話」シンジの前に立つアスカ。
ブラをしてないようで、ぽっちりが気になるシンジ。
「エッチなマダム?」少し顔が赤いシンジ。
「あたしはマダムじゃないけどねぇ」アスカが右手をソファーの肘に置き、シンジの耳元でささやいた。
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