第弐拾八.七話『 初めての混浴 』

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混濁した意識の中で、気付いたらシンジが、自分の首を絞めていたのだ。
しかし、あれは憎しみでも殺意でも無かったとアスカは感じている。
恐怖は無かったと、アスカは思い返す。しかし、何故シンジの頬に触れたのか、自分でもよくわからない。
『なんで…、あんな事?』あの手は【許すため】だったのだろうか?
「それは無いよ。…無いと思う」言い直すシンジ。
「戻ってこなかったら?」アスカは、水面を見つめたまま動かない。
「…二人でなら生きていけるよ、…きっと。」真剣な顔のシンジ。
「二人…かぁ」アスカは、意味深げに復唱する。
「あたしね…」シンジの肩に、アスカが頭を置く。
「ファーストに悪いことしちゃった…」少し、遠い目をする。
「綾波に?」横目でアスカを見る。
「本部のエレベーターで二人っきりになってさ…、あの子、言ってきたのよ。
『心を開かなければ、エヴァは動かない』って…。アタシが色々ダメに
なってた時にさ…」一番嫌な自分だった事に、アスカは胸が痛む。
「へぇ」気の無い返事の様でいて、シンジはレイとの最後の会話を思い出す。
「ひっぱたいちゃった…」頭を戻し、静かに言うアスカ。
「えぇ?」さすがに驚くシンジ。男子以外に手をあげるとは思えなかった。
「『碇司令が死ねって言ったら死ぬんでしょ?』って聞いたら『そうよ』って言うんだもの…あの子」アスカは寂しげに言う。
「そう…。綾波が…」アスカが話をはしょったので、話の全景は見えないが、シンジには、その時の光景が想像できた。レイは、アスカを心配したのだ。
シンジは父の事、そして、その父に総てを賭していた時期のレイを思い出す。
「それでも何も言わなかったのよ…。あの子」物憂げなアスカ。
「そんな事…、あったんだ?」シンジの声は、優しさを含んでいる。
「謝りたかったな…レイに…」アスカは唇がお湯につかる程、顔を下げた。
やはり、それは後悔だったのだろう。その声は擦れていた。
綾波レイは、もういない。
シンジは、アスカの髪を優しく撫でた。
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