第弐拾八.七話『 初めての混浴 』
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街から戻って早々に、我慢出来なくなったシンジの相手をさせられて、アスカは、人生2度目のセックスの余韻に浸っていた。
昨夜、身も心もシンジに委ねて、アスカは何か気持ちが楽になったような、満たされたような、充足感を感じていた。
自分が壊れてしまう以前に拘っていた事や、頑なな心が嘘の様に消えていた。
自分の心の壁が、自分や周囲の人を傷つけていた事が今は理解出来た。
今のこの世界には、シンジとアスカしかいないが、とりあえず幸せだった。
店の灯りは点かないが、住居部分の照明は復旧し、当面生活に支障は無い。
リビングのソファーで、ボケェーっとシンジが料理してる音を聞いていた。
「ねぇーシンジぃ?何か手伝おうかぁ?」アスカがボンヤリと聞いた。
「もぉ終わるからいいよ」台所からシンジの声がする。
さっきは強引だったクセに、この辺は以前と変わり無いシンジに、アスカは
何だか少し微笑ましく感じた。
「お風呂は掃除したっけぇ?」
「あぁ、まだだけどいいよ?ボクがやるから」
「んじゃぁ、あたしがするわ」アスカは、ソファーを立ち上がる。
「まだ、手の調子良くないんじゃない?」台所からシンジが顔を出す。
「左手だけで十分よ」アスカは気楽な返事をした。
二人の関係は、あの事件以前とは変わっていた。
それはまだ少し、ぎこちない部分も含んでいたが、二人の中で意識的に、前進する力へと変えていくことは、容易いことへと変わっていた。
日暮れも間近な時間、二人は夕食を済ませ、何も映らないテレビをつけたリビングで、あの事件に付いて話をしていた。しかし、謎は尽きない。
「じゃあ結局使徒は人間の別の可能性で、人間は18番目の使徒って事?」
シンジがミサトから聞いた話を聞き、アスカは落ち着いた声で聞いた。
「そうなるのかな…?でもよくわからないよ」シンジはカヲルを思い出す。
しかし、今のシンジにとって、それが語るべき事かどうかが判らない。
「エヴァシリーズも意味不明だったし…。あれって本当にエヴァだったのかしらねぇ?…まぁ気付いたら戦争になってたし」アスカは右手を見る。
「結局あれが、サードインパクトだったのかしら?」
「たぶんね…」シンジは少し寂しげに答えた。
「結局、ネルフ本部とゼーレの争いになっちゃったって訳ね」溜息をつく。
「ゼーレって何なの?」シンジは名前しか知らない。「ネルフの前身組織だったゲヒルンのパトロンよ。あたしも詳しくは知ら
ないけど、政財界の大物の集まりらしいって話は聞いたわね」
「やっぱり、父さんがやろうとしてた事と、意見が合わなかったのかな?」
「たぶんね…。でも、こんな世の中になったのは、ネルフのせいじゃないわよ…。きっとね…」本当の事はアスカにもわからない。
しかし、シンジに父親の責任など感じさせたくないとアスカは思った。
「まあいぃや。わかんない事考えても仕方無いわ。とりあえずお風呂入ろっかなぁ」アスカは立ち上がる。湿っぽくはしたくない。
シンジが軽く返事をし、少し歩いてアスカは思い出した様に言った。
「あぁそぉだ!シンジ後で背中流してくれない?」
「えっ?…うん、いいけど」
「右手の握力がまだちょっと無いのよ。あんまり腕上がらないし…」
「一緒に入ろっか?…ははっ」シンジが笑うと、少し冷めた顔をしたアスカ。
「冗談だよ…」少し慌てるシンジ。
「そぉね…。灯油無駄にしないし、いぃーんじゃない?」普通に言う。
「あれ?」意外な返事に、シンジは驚いた。