第参拾話
『 目覚める世界 』

モドル | ススム | タイトル一覧

  25  

フランカーは雲に消えてしまったが、アスカはしばらく西の空を仰ぎ見ていた。遠い空に、たなびくように消えていく爆音に耳を澄ませていた。
「やっぱり、戻ってきた人はいるんだ!」
シンジが快活な声を上げると、アスカは振り返る。
「どこに向かって行ったのかしら?」
「わからないけど、…でも、ボク達以外にも人がいるんだよ!」
シンジは興奮したように、そこまで言って、そこで言葉に詰まった。
アスカの思惑ありげな表情に気付いたからだ。
「どーしたの?嬉しくないの?」と訊ねる。
「…ん。なんでもない」
しばらく間を置いて、アスカは答えたが、この破滅した社会でのこれからに、一抹の不安が浮かんだ。総ての人類が帰還するとは思わないが、善人ばかりとは限らない。個人への復帰を求めた人間とはいえ、必要に迫られれば争いになる事も起こり得るとアスカは想像していた。
帰りの途中、警察署を見つけたアスカは車を停める。建物には損傷は無い。
「どーしたの?」シンジは怪訝な顔をしたが、無言のアスカについて中へ入る。アスカは散乱する制服の中から銃を拾い、残弾を確認しながら、「武器が必要になるかもしれないわよ」と言った。
「まさか、そんなぁ」とシンジは言ったが、少し、その意味に気付いた。
「念のために、用心するにこしたことはないわよ」
アスカの真剣な眼差しに、シンジは彼女の危惧を理解した。
『そんな事になったら、ボクはアスカを守れるのかな?』
一瞬そう思ったが、シンジは違う言葉を吐いた。
「ボクがアスカを守る」
アスカは突然の言葉に驚いた後、ニタァ〜っと笑い、
「さぁ〜っすがおっとこの子ねぇー」と茶化す。
アスカは少し嬉しかった。
モドル | ススム | タイトル一覧