第弐拾八話
『 夏の終わりに 』

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翌朝、目を覚まして早々に、アスカはシャワーを浴びに行った。
昨夜はあの後、裸のまま少し話込んでいる内にアスカが寝てしまい、シンジもいつの間にかそのまま朝を迎えた。
シンジが数時間前の出来事を反芻していると、タオルで髪を拭きながらアスカが戻ってきた。
「んー…」戻るなり唸るアスカ。
「どしたの?」聞いてみる。
「なぁんか、挟まってる感じがする」
「え?」少し意味がわからないシンジ。
「中に残ってるよぉーな感じがするのよ。歩き方も変だし…」
「うん…。確かにガニ股ぎみだね」ニガ笑いするシンジ。
少しカチーンと来たアスカ。
「あぁ…シンジのドス黒い欲望の果てに処女を散らしたかわいそぉーなアスカなのに…こんな目にあわされてまで、この仕打ちなんて」
ワザとらしく、タオルを目頭にあてる。
「そぉーゆう話だったっけ…?」
「顔にまで、ぶっかけされたし」ジト目のアスカ。
「えー…、すいません」
冷や汗流して、愛想笑いするシンジに、「わかればヨロシイ」とシンジの隣に腰掛ける。
そのままベッドに座ったシンジに寄り掛かり背中越しにつぶやく。
「優しくしないと怒るわよ…」
そのまま頭をそらし、シンジを見上げる。アスカの髪が香る。
シンジは無言のまま、アスカを正面に引き寄せ、「二人で生き抜こう…」
とアスカの瞳を見据えて言った。
シンジの目を見つめていたアスカが瞳を伏せる。
どちらからともなく求め、唇を重ねた。

軽く朝食をすませると、シンジが「今日はボク一人で行こうか?」とアスカに聞いてきた。ほとんど日課になった探索の事だ。
「なんで?」食器を下げようとしていたアスカが振り返る。
「動くの辛いんじゃないかと思って」シンジを見て歩み寄るアスカ。
「車だもん、別にどーって事ないんじゃない?」シンジの食器も下げるアスカ。「そーだね…」アスカの背中とテーブルを見て、シンジは言った。

二人は一度海岸を確認し、人気の無さを知ると再び、街へ向かった。
当然、人口数十万人の都市なので、どこに何があるかを知るだけでも
かなり時間がかかるだろう。人を探すのは無意味かもしれないが、探さないのも無意味だと思っていた。
結局、収穫は無かったが、いくばくかの食料を確保して、電気店を発見。
シンジが、「無線機と、コンポが欲しい」と言って入っていった。
アスカはボンネットに寄り掛かり、空を見上げて『暑さの感じが変わったかしらね』などと考えていた。
何か少し、涼しくなったと思いながら汗ばんだ喉に手を触れた時、シンジに首を締められた事を思い出した。
『何故だろう…』アスカは考えていた。はっきりした記憶は薄いが、包帯を巻いたのはシンジだったはずだ。
『なぜ、あんな事言ったんだろ…』良くわからないアスカ。
『あれが、私たちの最後の拒絶だったの? …ファースト?』
空を見つめるアスカの身体に、蝉の声がしみ込んでいた。
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